
イラン映画、ジャファル・パナヒ監督作品。
反体制派への苛烈な弾圧・拷問、主人公ワヒドもまた、後遺症に苦しんでいる。
ある夜、体制側の拷問者"エグバル”を「偶然」見つけたワヒドは復讐を決意。
殺害を試みるが、本当に”エグバル本人”か確信が持てなくなる。
というのも拷問中、ワヒドたち収容者は目隠しされていたから、
耳からの情報(エグバルの声と義足の足音)しか「本人と判断する」術がない。
ワヒドは他の被害者を訪ねて回る。しかし、皆も目隠しされていたので、確信が持てない。
加えて、仕返しすることへの、被害者たちの葛藤も描かれる。
平和主義者から完全なる報復(目には目を)を求める者まで様々。
”エグバル”の処置について、被害者の間で堂々巡りの議論をする展開は、『ゴドー待ち』。
この監督は復讐の怒り一色に染めず、笑いも挿入する。
「緊張と緩和」。そのあとはラストへ。
ラストは、長回しの拷問者と被害者の倫理観がぶつかる。
『エルサレムのアイヒマン』(H.アーレント)を思い出す。
名作。パルムドール受賞作。メガハイボール3杯。